訪問看護はどんな働き方?現役訪看ナースが徹底解剖します

2023.01.30掲載
看護師お役立ち情報

更新日:2023/1/30

訪問看護はどんな働き方?現役訪看ナースが徹底解剖します

この記事では、現役の訪問看護師である私が、訪問看護の働き方や具体的な仕事の中身を徹底的に解説します。

「訪問看護がどんな仕事か詳しく知りたい!」
「やってみたいけど、やっぱり不安……」

と思っていませんか?

病棟と違う訪問看護の世界に飛び込むのは、とっても勇気がいりますよね。
私も、訪問看護を始める前はとっても不安でした。

ですが、いざ飛び込むと、面白さとやりがいが満載の世界だったのです。

失敗したこともたくさんありました。

そんな私の失敗や成功体験、そして5年分の経験に基づいて訪問看護を大解剖して、まるまる全部、あなたにお伝えします。

訪問看護に少しでも興味があれば、ぜひ読んでみてください。
この記事を読めば、分からないこと、不安なこと、心配なことは全部解決できるはずですよ。

 

訪問看護ってどんな仕事?

訪問看護とは、どんな仕事なのでしょうか。

厚生労働省の定義では、訪問看護とは

”疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅 において看護師等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助をいう。”
引用元:厚生労働省「訪問看護」(外部サイト)

とあります。

簡単に言うと
「自宅で生活する患者さんの元に看護師や准看護師が出向いて、療養上のお世話や診療の補助をする」
ことです。

基本的には看護師の仕事なので、病棟と全く違うケアや処置はしません。
今、あなたが身につけている看護技術がすぐに役立ちますよ。

 

どうやったらなれるの?必要な資格は?

訪問看護師になるには、特別な資格を取得する必要はありません。

ただし

・正看護師
・准看護師

どちらかの資格が必要です。

働く場所は

・病院
・診療所やクリニック
・社会福祉法人や民間の会社が設立した訪問看護ステーション

のいずれかに所属します。

また、利用者宅(※)まで自転車での移動の場合もありますが、地方では車での移動が一般的なため、普通自動車免許が必要となることもあります。

もし、あなたの職場に訪問看護の部署があるのであれば、異動願いを出すだけでOKです。
反対に、訪問看護の部署がなければ、転職が必要になります。

(※訪問看護では、患者のことを利用者と呼びます。)

 

どんなことをしているの?

具体的には、病棟と同じようなケアを提供します。
ですが、医療的処置は、主治医の指示の下に処置をします。
「訪問看護指示書」を主治医から出してもらい、この指示書を元にケアをしていきます。

主なケアの内容をまとめました。

療養上の世話 医療的ケア 医療機器の管理
・入浴介助
・清拭
・陰部洗浄
・おむつ交換
・更衣
・服薬介助
・内服セット
・体位変換
・点滴
・中心静脈栄養のライン交換や滴下調整
・フォーレ交換
・ストーマケア
・胃ろう、腸ろうのケア
・褥瘡や層の処置
・経管栄養の注入
・吸引
・排泄ケア
・採血
・在宅酸素吸入の管理
・輸液ポンプの管理
・呼吸器管理

 

ただ、家でケア・処置するのにちょっとした工夫は必要となります。
なぜなら、自宅は病棟のように色々なものがそろっていないからです。

たとえば「陰部洗浄」の場合を考えてみましょう。
病棟なら陰部洗浄専用ボトルを使用しますよね。
ですが、自宅では、フタに穴を開けたペットボトルを代用することもあります。

さらに「洗髪」なら、頭の下におむつを敷いて洗います。
洗い流した後、おむつならすぐに捨てられて余計な洗い物が出ないので、利用者家族への負担も少なくなります。

看護師なら当たり前にできることを「自宅でできるようにちょっとだけ工夫する」ことも、仕事の一部と言えますね。

 

特別な知識やスキルは必要?

特別な知識やスキルが必要にも思えますが、そんなことはありません。
看護師であれば、誰でも訪問看護師として働けます。

病棟での経験が浅くても先輩が教えてくれますし、訪問看護の研修でスキルを磨くこともできます。
学ぶ気持ちがあればスキルはきちんと身についていきますから、大丈夫ですよ。

でも、自分が訪問看護に向いているかどうかは気になりますよね。

1.責任感があり主体的に動ける
2.コミュニケーションが嫌いではない
3.患者さん一人一人に合わせた対応ができる

この3つが訪問看護に向いている人の特徴と言われます。
病棟で一通りの業務がこなせていれば、心配はいりません。

それと、パソコンの操作はできた方がいいでしょう。
なぜなら、電子カルテへの記録はもちろん、月末月初に「訪問看護報告書」と「訪問看護計画書」の2つをパソコンで作成するためです。

 

1日のタイムスケジュール

訪問看護の1日の大まかな動きを紹介します。

時間 作業内容
8:30~9:00 出勤、ミーティング
その日の訪問予定の確認や、時間変更などの調整もします。
9:00~12:00 午前中の訪問2~3件
30分訪問、60分訪問、90分訪問を組み合わせて調整します。
訪問の合間に、ケアマネージャーへの連絡や主治医への報告なども行います。
12:00~13:00 昼休憩
午後の訪問によって休憩時間を早めることもあります。
13:30~17:00 午後の訪問2~3件
30分訪問、60分訪問、90分訪問を組み合わせて件数を調整します。
帰社してから、PCへの記録入力やカルテへの書き出しをします。
オンコール当番への申し送り
17:30 退勤
時々1時間ほど残業をすることもありますが、ほとんどは定時退勤できます。

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訪問看護の対象者はどんな人?幅広い年代、診療科に対応!

訪問看護の対象者はどんな人?幅広い年代、診療科に対応!

訪問看護の対象者は

・介護保険
・医療保険

の被保険者です。

対象領域は全診療科と言っても過言ではありません。

なぜなら、内科、整形外科、脳外科、循環器科、消化器科、泌尿器科、皮膚科、精神科……と、あらゆる病気、怪我の方が対象だからです。

しかも、大人だけでなく小児にも対応します。

医療の進歩に伴い、障害や病気があっても在宅で生活する選択をする人が増えています。
ただ、小児科や精神科は、すべての訪問看護ステーション(以下事業所という)が受け入れているわけではありません。
どの領域を訪問対象とするかは、各事業所で変わります。

 

在宅療養を選ぶ理由は? 

なぜ、在宅療養を選ぶのでしょうか。
それは、やはり、住みなれた自宅で過ごすのが一番リラックスでき、安心して過ごせるからです。

特にターミナル期にある人は
「家族と少しでも長く一緒にいたい」
と自宅に戻る方もいます。

また、お子さんの場合も
「できる限り、子どもと一緒に、当たり前の生活を送りたい」
と考える親御さんが増えてきています。

在宅生活に特化した持ち運び可能な呼吸器や吸引器が普及するようになり、自宅で過ごすことが「普通」になったのですね。

また、在宅に特化した訪問診療専門医も、全国で増えています。
医師が自宅に来てくれるので、より安心ですよね。

 

訪問看護で働くやりがい

「病棟経験浅くても大丈夫って言うけど、なんだかめちゃくちゃ大変そう!」
そう思いましたか?

そうですね、たしかに楽ではありません。

では、なぜ私が大変そうな訪問看護を続けているのでしょうか。

それは、私がこの仕事に大きなやりがいを感じているからです。
大変なことも多いけれど、それを上回る「やっていて良かった!」に支えられています。

どんなことがやりがいなのか、私がもっともやりがいを感じる場面を紹介しますね。

 

自分が役に立っていると実感しやすい 

1対1で向き合う訪問看護は、利用者さんにとって「自分だけの看護師」と感じてもらいやすくなります。

特に、在宅生活を始めたばかりの利用者さんは、本人も家族も不安でいっぱい!
そんな不安な気持ちに寄り添って、どうやったら生活がしやすいか、どんな工夫をしたらいいかを助言するのも、訪問看護の大切な役割です。

「あなたがいてくれて良かった」
「顔を見るだけで安心する」

利用者さんやご家族からそう言われたことがあります。
うれしいだけでなく「私、役に立ってる!」と感じられますよ。

 

ターミナルの利用者さんと家族が穏やかに過ごせた時

「家族に見守られて最期を迎えたい」
と願って、末期の方が退院してくることもあります。
そんな時は、必ず訪問看護が導入されます。

そして、退院したその日から、病状によっては毎日訪問しなければなりません。

清潔ケア、排泄ケアはもちろん私たちの役割です。
医師と連携しながら、苦痛のない穏やかな最期を迎えられるようお手伝いします。

もちろん、家族への心のケアや傾聴も看護の一部。
最期を迎える本人、家族は大きな不安の中にいますが、それを支えるのが私たち訪問看護師なのです。

いわば「縁の下の力持ち」的な存在として、本人・家族に寄り添えるのは、訪問看護の一番のやりがいとも言えます。

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働きやすい理由と大変なこと

働きやすい理由と大変なこと

やりがいが大きい訪問看護ですが、ちょっと大変なこともやっぱりあります。
メリット・デメリットを見ていきましょう!

 

働きやすい理由やメリット

・利用者さんと1対1で、自分の看護を実践できる
「自分の看護観」で、じっくりと利用者さんと向き合えます。

・夜勤がない
基本的には日勤だけなので、生活リズムが整いやすいのもポイントです。

・土日祝日休みが基本
家族の用事など都合を合わせやすいのは、うれしいですね。

・コミュニケーションスキルがものすごく上がる
利用者さんや、家族、ケアマネージャーなどの関係者と常にコミュニケーションを取るため、自然とコミュニケーションスキルが上がります。

・あらゆる診療科の基礎知識が身につく
初めは知識不足を感じます。
でも、広く浅く、時々深くあらゆる疾患の知識を身につけることができます。

 

辛く感じる時やデメリット

・責任を重く感じやすい
一人で訪問、ケアするので、どうしても責任を背負ってしまいがちです。
でも、最終責任者はあなたではなく管理者。
迷った時や困った時は責任者に相談しましょう。

・平日は休みにくい
看護師3名の事業所の場合(※1)、急な休みが取りにくい場合もあります。
病棟で言うプライマリー制チーム固定ナーシング(※2)が基本ですが、事業所によっては完全なプライマリー制(※3)のところもあるのです。

完全なプライマリー制だと、休むために利用者さんの訪問を別の日にずらすなどを自分でやらなければならず、急な休みは難しいかもしれません。

看護師数が多い事業所なら、休みが取りやすいとも言われますから、もし転職するならチェックポイントの一つにしても良いでしょう。

・オンコールがある
夜勤の代わりにオンコール体制の事業所がほとんどです。
これも、看護師が少人数だと当番の日数が多くなりますが、体調や疲労によって交代もしてもらえますよ。

・小さな事業所では人間関係が密になりやすい
どんな病院、施設でも、色々な人間関係がありますよね。
でも、スタッフ同士のコミュニケーションがスムーズなら、嫌な関係にはならないでしょう。

・どうしてもうまくいかない時もある
利用者さんや家族とうまくいかないことは、結構あります。
人間同士ですから、合わない人がいるのは当たり前です。
そんな時は担当を変えてもらえるので、大丈夫ですよ。

※1.厚生労働省、指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 (外部サイトに移動します)
※2. プライマリー制チーム固定ナーシング:計画立案や報告書はプライマリーナースが担当するが、訪問はプライマリー以外のナースも担当するやり方
※3.プライマリー制:計画立案から訪問まで、全て一人のナースが担当するやり方

 

うまくいく考え方と心構え

訪問に行く時に、特に気をつけたいことは6つです。
一つずつ見ていきましょう。

 

受容と共感、傾聴を重視しよう

常に相手の言い分を受け入れる姿勢でいると、利用者さんは
「分かってもらえている」
と感じます。

反対に否定されると
「もうこの看護師に来てほしくない」
と思ってしまうこともありますから、相手の言うことを、まずは受け入れるのが◎ですよ。

 

気配り目配りで利用者さんに安心感と信頼感を持ってもらえる

たとえば
「どんなふうにしたら、寝やすくなるかな」
「どこに座ると利用者さんが話しやすいかな」
と考えることですね。
利用者さんファーストの精神と言い換えても良いかもしれません。

 

利用者さんは、みんなで共有する存在だと思おう

利用者さんとの関係を抱え込んでしまうと、相手が依存的になり、あなた自身も苦しくなってしまいます。
それに、他の看護師を受け入れなくなってしまうかもしれません。
訪問の状況や会話の内容は、どんどん話題に上げていきましょう。
スタッフ間のコミュニケーションが活発にもなりますよ。

 

利用者さんの領域にお邪魔させてもらっている感覚を持とう

病棟と違い、利用者さんの自宅はプライベートな場所です。
むやみに他の部屋に立ち入るのはNG。
使ったものは元に戻し、訪問した時と同じ環境にして帰るようにするのが◎です。

 

利用者さんを自分の大切な家族のように考えてみる

「感情移入する」のではなく「敬意を持って」対応をすることが大切です。
相手を尊重する姿勢は必ず利用者さんに伝わって、あなたを信頼してくれるようになりますよ。

 

最低限のマナーを守ろう

挨拶、言葉遣い、靴の脱ぎ方、スリッパを持参する、コートは玄関外で脱いで上りかまちに置かせてもらうなど、基本的なことです。
人間関係の第一歩とも言えますね。
よく分からない場合は、先輩や管理者に聞いてみましょう。

 

まとめ

まとめ

訪問看護の働き方を、具体的に解説しました。

訪問看護をするのに、特別な資格も知識も必要ありません。
対象者は年齢も、疾患も幅広いため様々な知識を身につけられますね。

利用者さんから信頼され、利用者さんや家族の役に立てる、やりがいある仕事だと分かっていただけたのではないでしょうか。

夜勤がないので生活リズムを整えやすいだけでなく、土日が基本的には休みなのもうれしいポイントです。
働きやすさも魅力ですね!

その反面、ちょっとした気遣いや言葉遣いには注意する必要があり、最低限のマナーは守らなければなりません。
しかし、それはどの施設、病院でも同じですよね。

病棟で身につけた技術をいかして、あなたの目指す看護を実践できるのは、訪問看護の醍醐味かもしれません。

訪問看護にちょっとでも興味があるのなら、まずは飛び込んでみてください。
あなたならきっと、やれるはずですよ。

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この記事を書いた人:鈴木 ミギワ [Suzuki Migiwa] / 看護師
著者:鈴木 ミギワ 看護師・社会福祉士・ウェブライター。
社会人から回り道をして看護師資格を取得しました。
超急性期・慢性期の病棟勤務を経験し、訪問看護の道に入りました。訪問看護は5年目に。
2回の転職や、頑張りすぎて体調を崩した経験を教訓に、現場で頑張る看護師の皆さんに寄り添った情報をお伝えしたいと思っています。