看護師がQOL向上のためにできることとは?

2023.01.30掲載
看護師お役立ち情報

更新日:2023/1/30

看護師がQOL向上のためにできることとは?

看護師として働いていると、患者さんのQOL向上を助けたい、もっと患者さんに寄り添った看護がしたい、そう考える場面に出会うことが多々あります。

「生活の質」と訳されることが多いQOL(きゅーおーえる、クオリティ オブ ライフ)ですが、「患者さんのQOLってなんだろう?」と悩んでしまいますよね。

特に病棟では、どうしても治療的な立場から患者さんを捉えてしまいがちです。
でも、そこで治療に励む患者さんが、前向きに、穏やかに、入院生活を送るために私たち看護師はどんな考え方、思いでいたらいいのでしょうか?

この記事では、患者さんのQOLの向上寄り添った看護をするためのヒントと事例を取り上げました。
あなたが患者さんに接する時、どのように相手を捉え、QOL向上に向けてどう支援したらいいのかについて学ぶことができます。

ぜひ、参考にしてみてください。

QOLとは?3つの側面を知ろう!

QOLには以下の3つの側面があります。

・健康関連QOL
・健康関連以外のQOL
・生き方に関するQOL

この3つの側面は、どれも少しずつ重なり、関連し合いながら患者さん全体のQOLを構成しています。
一つずつ確認してみましょう!

健康関連QOL

これは、医療の現場でよく取り上げられる側面ですね。
苦痛がないこと、精神的に穏やかであること、などとして捉えられます。

健康関連以外のQOL

生活環境が整っている、清潔な衣類を身につけられる、仕事がある、お金があるなど、物理的な側面と捉えます。
この場合、病床環境を想像すると分かりやすいです。

生き方に関するQOL

これは、その患者さんが生きていく上で大切にしていることです。
たとえば、治療を頑張っている自分への肯定感や、病気と戦おうとする前向きな気持ちも含まれます。

それ以外に、趣味を楽しむ気持ち、家族とともにいられる幸せな気持ちなどもあります。
生き方への満足感、幸福感のことです。
自分らしくいられること、と言い換えても良いですね。

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患者さんのQOLを向上させる3つのヒント

では、患者さんのQOLを向上させるためには、どんな気配り、思考が必要でしょうか?

それには、上述の3つの側面からのアプローチが必要です。
一つずつ、押さえていきましょう!

健康関連OQLの向上は医療の立場で考える

健康関連QOLの場合、それはバイタルサインや、患者さんの表情、顔色、手足の冷感、ここから患者さんの出しているサインを読み取ることで、向上への働きかけができます。

たとえば、寝たきりの患者さんで、血圧がいつもより高く、眉間にシワを寄せ少し呼吸も荒い……でもサチュレーションには異常がないとします。

こんな場合は、「どこか痛いのかな?」と、推測できますよね。
そして、痛みはどこからきているのか探すこともできるし、対処法も浮かんでくるはずです。

・鎮痛薬の与薬を検討する
・体の向きを変える
・タッチング
・マッサージ

……などですね。

このように、患者さんの小さな変化に気づけると、あなたが受け持つ患者さんのQOLは大幅に上がりますよ!
そのためには、よくベッドサイドに足を運ぶこと、患者さんをよく見ることを意識してみてくださいね。

健康関連以外のQOL向上は想像力を膨らませて!

上記の例に挙げた患者さんについて、
「もっと他のことも考えられると思うけど……」
と思いませんでしたか?

そうですね、血圧上昇、苦顔あり、呼吸促迫の原因は他にも考えられます。

たとえば
「暑いのかな?」
と想像できますよね。

そんな時は、患者さんの療養環境が適切であるかをチェックしてみましょう。

汗をかいていれば掛け物を調整し、着替えや体を拭いてあげることもできます。
反対に寒さを感じているようであれば、足元に湯たんぽを入れ、毛布を一枚追加してあげられますよね。
食事の際も、患者さんのADLに合わせた食器やスプーンなどを工夫するのと同じ考え方でOKです。

・物理的な部分で解決できることはないか?
・自分が患者さんの立場だったらどう感じるか?

この二つの視点で想像力を膨らませることを覚えておいてくださいね。

生き方に関するQOLは相手を知れば自然と上がる!

「生き方って言われても、そんなのよく分からないよ」

そうですよね!
相手をよく知るのは、現代の医療ではなかなか難しいかもしれません。
なぜなら、それは、入院期間が短いから。

簡単な手術だと日帰り、長くても2週間程度しかありません。
その短期間で相手を深く知ることは、なかなか困難な道……ですよね。

しかし、そんな中でも相手を知ろうとする気持ちを持つのが、非常に大切です。
相手を知りたいと思えば、自然とそういう態度、行動を起こすものですから。

とはいえ、キッカケがつかめない……と感じるかもしれません。
そんな時は、患者さんが持ち込んだものをよく見てみましょう。

たとえば、枕元に小説やゲーム機、パソコンなどがオーバーテーブルに置いてあるとします。
すると、

「この人は読書が好きなんだな。ファンタジーかな?ミステリーかな?」
「何のゲームやってるのかな?」
「パソコン……仕事かな、入院中でも休めないのかな?」

と疑問が湧いてきませんか?

あるいは、家族やペットの写真が飾ってあるかもしれません。
病衣ではなく花柄のパジャマだったり、置いてある小物にも花柄が使われたりしていれば花が好きな人なのかもしれません。
それらを、バイタルを測りながら話題にしてみてください。

すると、患者さんは「自分のことをよく見てくれている」と親近感を持ってくれます。
誰でも、自分の好きなことを分かってくれる人がいれば嬉しいですよね!
それをきっかけに、どんなことに生きがいを感じているか、どんな考え方で、何を大切にしているのかを引き出しましょう。

・患者さんの生き方や生きがいに当てはめると、今の状況はどうか?
・その人がより良く生きるために、日常でできる工夫にはどんなことがあるか?

という視点を持ちながら、患者さんと接してみてくださいね。

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QOL低下中……こんな場面はどう寄り添う?

QOL低下中……こんな場面はどう寄り添う?

明らかにQOLが低下している場面も、多々あります。
筆者が経験した中で、QOLが向上したと感じた方たちの例を、少しだけ紹介しますね。

寝たきり、何もしたくないIさん

70代女性のIさんは、うつ状態から食事が取れなくなり脱水が進行、肺炎も併発し入院されてきました。
極度のるい痩と活気の低下で寝たきり状態となりました。

それでも徐々に状態が落ち着き、リハビリが始まりました。
靴を履く介助の際にふと、

「私の足、大きいでしょう?」

と話しかけられたのです。

「山登りが好きだったの。」

そこで私は、どんな山に行ったか、どこが一番印象に残っているかなど、あれこれ聞いてみました。

でも「もう何もできないし、したくないの」と表情を曇らせるIさん。
そんなIさんに、登山する代わりに山を題材にした本を眺めてみたらどうかと提案したところ……院内の図書館で見つけた、山を題材にした小説に大ハマりします。
次第に活気が戻って、リハビリにも熱が入るようになりました。

そして、歩行器でトイレに行けるようになり、無事、自宅に退院していきました。
好きだったことに着目した行動がIさんの活気を取り戻すことにつながり、全体のQOLが向上したのです。

眠れない……Uさん

Uさんは、80代の女性で、心筋梗塞とその後の腰椎圧迫骨折、骨折部位への感染のため、長期の入院を経験しました。
そして、退院後すぐに訪問看護を利用した方です。

しかし、やっと自宅でゆっくりできると思ったその日から入眠障害が出現し、朝方、明るくなるまで眠れないのです。

そこで、まずはカフェインの摂取制限から始めました。
すると入眠時間は3時頃になりますが、つらい状況には変わりません。

だから「眠れない時は寝なくてもいいんじゃないか?」と提案しました。
昼間、夜間の睡眠不足を解消しても良いと伝えたのです。

「そうか、別に寝なくても良いか!テレビ見たり、本読んだりできる時間だと思えば良いわよね!」

そう気持ちを切り替えたUさんは、次第に入眠時間が早くなっていき1〜2時頃に眠れるようになっていきました。
本来は、昼夜逆転を正すべきところですが、「夜は眠らなければならない」という考え自体がストレスになって、入眠を妨げていたのでした。

まだ眠れない日もありますが「それが私」と受け入れることで、穏やかな表情で過ごせるようになりました。

症状にどう対処していいか分からないNさん

Nさんは、くも膜下出血、胃がん、大腸がんなど、命に直結する大病を何度も経験してきた、60代の男性です。

・胃が小さく、食事が十分に取れない
・少し動くと、すぐに疲れてしまう
・便秘がひどい
・皮膚が乾燥してボロボロ
・お風呂に入るのが大変

これらのマイナートラブルを抱えていました。
しかし、自分ではどう対処したら良いのか分からずにパニック状態にあったのです。
そんな中、訪問看護を利用しました。

常にイライラし、周りを攻撃する場面も。
でも、誰かに手伝ってもらったり、支援されたりするのはイヤで、自分でどうにかしたいと考えていました。
そこで、彼の疑問、不安を徹底的に引き出して、ひたすら助言することにしたのです。

すると……

  • 食事が取れない→チョコやビスケットでティータイム、楽しみながらカロリー摂取
  • すぐに疲れる→体が休みたがっているサイン。我慢せずに休む時は休み、動く時は動く、とメリハリのある生活に。
  • 便秘→水分の取り方と下剤の使い方を指導。コーヒーをやめて牛乳や白湯に変えたところ便秘が改善。
  • 皮膚が乾燥→保湿剤の塗り方を指導、ツヤツヤに改善
  • お風呂が大変→週1回でもOK、夏場はシャワーで十分!

こうして、自分の抱える問題に対して一つずつ対処できるようになっていき、次第に

「俺は、自分で自分をちゃんとコントロールできる!」

と、強い自己肯定感を持つことができるようになったのです。

上記の例は、その人がどんな考え方、生きがいを持っているのかを知り、それに合わせた支援をした結果ですが、QOL全体の底上げにもなりました。

「この人はどうやって生きてきたのか?」

私の場合、こう考えながら相手と話すようにしています。
その人の歩いてきた人生を、少しでも理解したいと思いながら関わっています。

これが私の、相手のQOL向上に対する向き合い方です。
そして、すぐにできる工夫はないか考えること、これが重要だと考えています。

その人の求めているゴールをくみ取れるよう関わってみてください。
きっと、患者さんの望んでいるものが見えてくるはずですよ。

まとめ

まとめ

いかがでしたか?
患者さんのQOL向上に向けた視点、考え方、気配りについて解説してきました。

まず、QOLと一口に言っても、3つの側面から患者さんを捉える必要性がありましたね。
それは、健康関連QOL、健康関連以外のQOL、生き方に関するQOLです。

QOLを上げるためには、その3つの側面からアプローチする視点や思考が支援の最大のヒントになります。
患者さんには、それぞれのこだわり、考え方、生き方があります。

そして、
「自分が患者さんの立場だったらどうか?」
だけでなく、
「患者さんの生き方や生きがいに当てはめると、今の状況はどうか?」
も合わせて考えることが、QOL向上につながるのです。

健康的側面だけでなく、その人がより良く生きるために日常でできる工夫には、どんなことがあるか?という視点を、コミュニケーションにぜひ取り入れてみてくださいね。

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この記事を書いた人:鈴木 ミギワ [Suzuki Migiwa] / 看護師
著者:鈴木 ミギワ 看護師・社会福祉士・ウェブライター。
社会人から回り道をして看護師資格を取得しました。
超急性期・慢性期の病棟勤務を経験し、訪問看護の道に入りました。訪問看護は5年目に。
2回の転職や、頑張りすぎて体調を崩した経験を教訓に、現場で頑張る看護師の皆さんに寄り添った情報をお伝えしたいと思っています。