【現役看護師が解説】ICUでの働き方って?やりがいや仕事内容とは
更新日:2023/1/25
看護師として働くうえで、どんな部署で働きたいか、これからどんなキャリアを積んでいきたいか、考えたことはありますか。
中には、「救命病棟やICUなどの超急性期でバリバリ働いてみたいな」なんて考えたことがある人もいると思います。
最近、コロナウイルス関連の「重症病床」としてICUが取り上げられ、実際の現場をテレビで見ることも多くなってきました。テレビで見る限りではなんだか難しそう、緊張感が凄そう、私にできるのかな…なんて悩んでしまいますよね。
そんな方へ、総合病院ICUで8年働いてきた筆者が、実情をできるだけ分かりやすくお伝えし、外からではわからない実際の声をお届けします。
これを読んで、ICUで働いてみたいな、と思ってくださる方が増えることを願っています。
また、ICUの経験がある方にも、他の病院のICUってこんな感じなんだな、三次救急の病院でも働いてみたいな、と思っていただけたら嬉しいです。
目次
ICUの看護師とは?
どうやったらなれるの?
よく、「ICUの看護師さんってどうやったらなれるの?資格が要るの?」と聞かれることがありますが、そんなことはございません!
みなさんと同じ看護師免許だけです。
専門学校卒、大卒も関係ありません。
就職時、または異動希望で「ICU」を希望するだけです。
最初からICUでの勤務を希望される方は、ICUに力をいれている病院に就職することをお勧めします。
しかし、ICUが充実しているということは、同じような希望でその病院へ就職している方が多く、希望の部署で働けない可能性もあるので注意が必要です。
必要なスキルって?
その病院で扱っている全診療科のおおまかな知識と看護技術が必要です。
また、解剖生理学として、各臓器の名称や働きについての知識も必須となります。
看護分野としては、周手術期看護、心臓血管外科・脳神経外科の看護(入室する患者が多いため)、生体侵襲、急変対応(BLSやACLS)の知識が主に必要になります。
びっくりするほど幅広いですが、最初は広く浅く勉強するところから始めて、仕事をする中で少しずつ深めていくというような感じです。
臨床で学んでいくことが本当に多く、またガイドラインも頻繁に更新されるので、常に新しい情報を仕入れていく必要があります。
どんな患者さんが来るの?
筆者の勤めている病院では主に、侵襲の高い手術後の患者さん、院内に入院されていて急変した患者さん、救急車で運ばれてきて重症と判断された患者さんが入室します。
以前二次救急の病院に勤めていた時には、患者層は高齢者が多かったですが、三次救急に来てからは全年齢層の患者さんが来るようになりました。
診療科としては、心臓血管外科・脳神経外科の術後、交通外傷、呼吸不全(人工呼吸器管理)、出血や敗血症などでのショック状態、緊急透析が必要な腎不全、痙攣重責発作などです。
どの患者さんも、まずは気道を確保し呼吸状態を安定させること、輸血や薬剤を使用し循環状態を安定させることを第一に対応していきます。
それと平行し、原疾患の治療も行っていきます。
仕事内容は?
ICUの看護体制は2:1看護なので、日勤でも夜勤でも最大2名の患者さんを受け持ちます。
「2人だけなの?楽そうだね?」と思う方もいらっしゃると思いますが、やってみるとそうでもないんです。
2~3時間ごとにバイタルサインを計測し記録、山のような点滴をつなぎ、自分で動けない患者さんの清潔ケア、体位変換、食事は全介助か経管栄養、そしてまた記録…と優先順位を考えながら業務にあたっていきます。
ベッド移動も多く、状態が良くなってきた患者さんを一般病棟へ移し、新たな患者さんを受け入れる、そして緊急で電話がかかってくれば即対応、とあわただしい毎日です。
おかげで一日が短く感じます。
おおまかな一日の流れ
平日、日勤のおおまかな流れをご紹介します。
8:00 |
出勤、情報収集。予定手術の患者さんの情報も収集します。 |
∼8:30 | 申し送り。2名分ですが、情報量が多いため20~30分ほどかかります。 |
∼9:30 | 清潔ケア。全介助で更衣と清拭、おむつ交換。 |
∼10:00 | バイタルチェック① 点滴類を落とします。 |
∼12:00 | 朝回診(深夜帯)で指示が出た検査出し、実施。 術後患者さんの書類や点滴の準備 医師から家族への病状説明同席 透析をする患者さんの準備 輸血や麻薬投与指示があれば、検査室・薬剤部へ取りに行く |
∼12:00 | バイタルチェック② 食事介助、内服管理。 一般病棟への患者さん移動、術後のベッド作り、患者受け入れ |
∼14:00 | バイタルチェック③ 看護記録 家族面会時の対応、術後患者の受け入れ |
16:00 | バイタルチェック④ 医師へ夜間の指示を確認 |
∼16:30 | 申し送り |
∼17:00 | 片付け、記録 |
これの合間に、院内急変や救急外来からの入院要請が来ます。
予定手術のみであれば14~15時ごろは落ち着いていることが多いのですが、予定外が入るとスケジュールがすべて押されてしまいます。
しかし、予定外の事象に対してはチーム全体で対応するため、残業は一般病棟に比べれば少ないと思います。
患者さんの状態が落ち着いていない場合には、医師へ頻繁に電話で指示を確認し、指示された処置を行わなければならないので、お昼がどんどん遅くなるなんてこともあります。
ICUで働くやりがい
仕事内容を紹介すると、なんだか大変そう…というイメージばかり膨らんでしまいますが、それを凌駕するやりがいがあると筆者は感じています。その理由をいくつか説明します。
重症患者を看るスキルが身につく
テレビニュースやドラマでICUを見て、かっこいいなと思ったことはありませんか。
その登場人物に自分がなれるんです!勉強は大変かもしれませんが、スタッフ全体が勉強しようという雰囲気もあり、医師も聞けば教えてくれる体制があるので、自然と身につくようになります。
チーム医療の要になる
医師と家族だけでなく、薬剤師や栄養士、理学療法士さんや臨床工学技士さんと密に連携をとり、患者さんによりよい医療が提供できるよう努めています。
患者さんの一番近くにいるのが看護師であり、自らアプローチしていくことで、治療方針に関わることができるのは、大きなやりがいにつながると思います。
家族とのつながり
ICUに入室するような患者さんの家族は、大きな心配や不安を抱えています。
中には患者さんに触れない、直視できないなんて家族もおり、そういう方々が少しでも病状を理解し受容できるよう関わることで、家族との信頼関係も生まれます。
「先生(医師)には聞けなかったけど、看護師さんになら聞ける」という家族もおり、看護師を身近に感じてくれていることを実感できます。
命について考えることができる
命の瀬戸際にいる患者・家族と接するのは、精神的につらいと感じることもあるかもしれません。
しかし、大病を患った患者さん、家族の言葉には、自分の人生を省みる大きなヒントが潜んでいます。
日々なんとなく生きているよりも、いつかは必ず死ぬのだから、それまでにやりたいことをみんなやってしまおうというモチベーションにもなり、毎日を大切にすることができると思います。
また、超急性期であるため、患者さんの回復も目覚ましいものがあります。
昨日までは反応のなかった患者さんが、次の日には意思疎通ができるようになり、その次の日には人工呼吸器を離脱し会話ができるようになり、と、どんどん良くなっていく様子が見られるので、それも働くうえで大きなモチベーションとなります。
ICUで働くうえで大変なこと
そうは言っても、やっぱり大変なこともあります。それを乗り越える方法、考え方の転換も一緒にお伝えしていきます。
勉強が大変そう…
何度も出てきますが、やはり勉強はネックですよね。
まずは興味のあるところから始めて、「わかった」体験を積み重ねていくことで、より深く理解できるようになります。義務的に机に向かうより、仕事のなかでどんどん質問していきましょう!
命がかかっているというプレッシャー
ちょっとした兆候に気づくことができなかったら、患者さんの状態が悪くなってしまう、そんなプレッシャーが重いと感じる方もいるでしょう。
しかしICUは特にチーム全体で患者さんを看ているため、ちょっとでも気になることがあれば相談できますし、周りからも指摘してもらえるので安心です。
昼も夜も無い
夜勤があるという点では一般病棟でも変わりませんが、「夜は患者さんは寝ているもの」という常識が通用しません。
ICUはせん妄のリスクが高く昼夜が逆転してしまったり、人工呼吸器を装着している患者さんには昼と同じくらいのケアが夜も必要だったりします。
そして地域のクリニック等がやっていない休日や深夜にこそ入院が多くなるものなので、病院によっては昼より夜のほうが忙しいなんてこともあるかもしれませんね。
これに関しては、対策が見つかりません…。ICUは忙しい、というのは覚悟して働くしかないですね。
指示の確認が難しい
ICUには「オープンICU」と「クローズドICU」という2つのタイプがあり、前者は患者さんがICUに入っても、変わらず主治医がすべての治療方針を決定するというもので、後者はICUに専任医師がいて、ICUに入ったらすべて専任医師の指示に従うというものです。
筆者の病院では「セミ クローズドICU」のタイプをとっており、オープンとクローズドの中間です。
主治医と専任医師で相談し治療方針を決定していくのですが、そのせいで誰に指示を確認したらよいのか判断が難しいことがあります。
また、家族にも「セミ クローズド」のシステムを理解してもらうのが難しく、誰の話を信じたらよいの?と聞かれてしまうことがあり、説明に苦労することもあります…。
そのため、日々様々な医師とコミュニケーションをとり、治療方針の把握やすり合わせを行っていく必要があります。
多職種連携と同様、看護師のコミュニケーション技術の見せ所と思って、日々情報収集に励んでいます。
まとめ
ICU看護師の仕事内容が少し伝わりましたでしょうか。
ICU看護師として8年働いている筆者としては、ICUは「大変だけどとてもやりがいのある仕事」だと思っています。
日々新しいこと知るという発見があり、何年やっても飽きることはありません。
まだまだ勉強の途中と感じています。
時折、重症だった患者さんが元気になって退院する際に、ICUへ挨拶に来てくれることがあります。
ICUにいた頃の記憶はない方が多いのですが「つらかったことだけは覚えている。本当にお世話になりました。」と言われ、それだけで業務のつらさなんて吹き飛ぶほどの喜びがあります。
看護師という資格を活かせる職場はたくさんあります。
少しでもやりたいという思いがあるのなら、やらないなんてもったいないです。
不安が大きかったり自信が持てなかったり、一歩を踏み出すためには勇気が必要ですが、やってみてつらかった、合わなかったとしても、それは確実に自分の力になるので、挑戦することを諦めないでほしいと思います。
その勇気は、仕事以外のところでも必ず発揮され、より輝く自分に成長できますよ。
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