介護職にバーンアウトが多い理由とは?元介護職でバーンアウト経験者が解説
更新日:2023/1/30
看護師や介護職などの体やこころのケアの大切さを知っている専門職の方でさえ、バーンアウトになることがあります。
「バーンアウトはどうしてなるの?」
「バーンアウトになったらどうしたらいいの?」
「そもそもバーンアウトって何なの?」
そんな疑問に答えるため、今回の記事ではバーンアウトについてまとめました。
原因や症状について解説したあと、実際にバーンアウトを経験した筆者の発症から回復までをまとめたエピソードも記入しています。
この記事を読めば、バーンアウトについて理解を深めることができ、自分を責める必要はないことがわかると思います。そして、この先どうしたらよいかのヒントも記載しました。
バーンアウトで今苦しんでいる方も家族や同僚のために深く知りたいという方も、ぜひ最後までご覧ください。
目次
バーンアウト(燃え尽き症候群)とは?
バーンアウトとは燃え尽き症候群とも呼ばれ、こころのバランスが崩れている状態のことです。
現在のところ、明確な診断基準がなく厳密には病気と定義されていません。
そのためメンタルクリニックなどの診断では、「うつ病」「一過性ストレス障害」「適応障害」と診断されることもあります。
「どうしても仕事のやる気がおきない」
「人とのコミュニケーションがおっくうに感じる」
「仕事をがんばっているのに達成感を感じられない」
このように感じる特徴があり、特に対人サービスの仕事についている人たちに多く見られます。
例えば、看護師や教師、介護士などの人をサポートする仕事があげられます。
その他にCAやホテルマン、飲食店のスタッフなどお客さんの満足度を高める仕事も発症率は高めな傾向があります。
バーンアウトになった後に休職や退職に至るケースもあり、会社側も対処する必要があると認識されている症状です。
「なぜ介護職にバーンアウトが多いの?」
こんなふうに上司や同僚に言われたことはありませんか?
「利用者の前で悲しい表情を見せてはならない」
「いつも利用者の前では元気でいるべきです」
「相手の目を見て笑顔でコミュニケーションをとること」
これらは感情のコントロールが必要な高度な技術です。しかし感情のコントロールは簡単ではありません。
高度な技術が求められる介護職は、感情労働の仕事とも言われています。
介護職は、相手の感情を優先して自分の感情を抑えるという目には見えない苦労があるのです。
次にバーンアウト発症の理由を個人要因と環境要因の2つから見ていきます。
個人要因
仕事に対してまじめで責任感をもっている誠実な人ほどバーンアウトになりやすいと言われています。
また、年齢が若い人や仕事の経験がまだ少ない人ほど、理想の仕事と現実とのギャップに悩みバーンアウトしてしまう傾向があります。
環境要因
特別養護老人ホームなどの入居施設では、正職員の介護職のシフトは多種多様です。
大きく分けても「早番」「日勤」「遅番」「夜勤」があり、睡眠の時間も不規則になりがち。
排泄介助や歩行介助、入浴介助などの身体介助の場面では、介護職に身体的負荷もかかっています。
長時間勤務や不規則なシフトに加え、身体介助などの身体的負担まで合わさればバーンアウトに繋がりやすいことがわかっています。
ちなみに個人要因と環境要因の2つが合体して起こる場合もあれば、どちらか1つでも起こることがあり、個人の努力不足とは言われていません。
「バーンアウト」の症状
情緒的消耗感
「仕事のために、1日のほとんどのエネルギーを使っている」
「仕事終わりは解放感がすごい、次の日の朝はいつも出勤したくないけど……」
このような気分になっていれば、それはバーンアウトの症状である「情緒的消耗感」かもしれません。
介護の仕事は相手との信頼関係が大切と言われています。
確かに介助される方もする方も、信頼関係があれば不安や緊張が少なく気持ちよく介助できるでしょう。
しかし、信頼関係を構築することはとても大変です。
なぜなら信頼関係をむすぶには、
・相手の目をなるべく見る、
・笑顔をこころがける
・言葉使いやイントネーションに気をつける
などの気配りが、毎日いつでも必要とされるからです。
常にこんな風にがんばっていれば、疲れるのは当然です。
このようながんばりを続けた結果、こころのエネルギーが枯渇してしまった状態のことを情緒的消耗感と言います。
脱人格化
「私の仕事の成果など本当は意味がないと思う」
「同僚や利用者の顔を見るのも、声を聴くのもいやだ」
「職場で一人になりたいと思うことが多い」
このような気分のときは、バーンアウトの症状である「脱人格化」かもしれません。
こころのエネルギーが少なくなれば、体やこころは省エネモードに入ります。これは残り少ないエネルギーを大切にしようとする反応です。
それまで笑顔で利用者と接することができていたのに、急にそっけない態度をとったり応対する場面を避けたりすることもあります。
わざと冷たい態度をとっているのではなくて、自分の大切なエネルギーをこれ以上消費させないようにする反応。
あなたの本質が変わったわけではありません。これ以上疲れないよう本能的に守ってくれているのです。
このような状態を「脱人格化」と言います。
個人的達成感の低下
「あのときはとても頑張れて仕事が楽しかったのに、今はどうしてできないのだろう?」
このような気分のときは、バーンアウトの症状である「個人的達成感の低下」かもしれません。
こころが疲弊して、省エネモードのときは以前のように積極的に働くことが難しくなっています。
仕事の成果が出ないのも仕方がないこと。
しかし、仕事のパフォーマンスについて過去の自分と今の自分を比べてしまい自信を喪失してしまうことがあります。
達成感を感じにくくなり、がんばることが空しくなってしまうことも。
このような達成感を感じにくくなっている状態を「個人的達成感の低下」と言います。
そして本来の自分を見失うことで、休職や退職になるケースも珍しくはないのです。
介護職でバーンアウトになった私が回復した理由と学んだこと
実は私もバーンアウトを経験したことがあります。
私が28歳の頃、結婚を機会により収入の高い会社に転職してまだ間もない頃のことです。
特別養護老人ホームの介護職として2年目でした。
ある日「こんな仕事に意味はあるのだろうか?」とふと頭に浮かんだのです。
そんな思いも仕事が忙しくて忘れていたのですが、またしても
「この仕事は私でなくてもいいのではないか?」
と頭に浮かび、やがて仕事をがんばる意味がわからなくなってしまいました。
食欲がなくなったり、夜よく眠れなくなったり、よくわからない体の不調をごまかすためにお酒の量も増えていきます。
夜勤のために、昼に寝なければ!と焦る気持ちも出てきて……
なんとか仕事をこなしていたけど、ある日急に会社に行きたくない!と強く思い欠勤。
結婚したばかりだし、お金が何かと必要なのにこれでいいのか!?と思いました。
不安や焦りなどいろいろな思いが頭の中でグルグル回っていたのを覚えています。
私の場合、夜勤を含めた不規則なシフトが合っていなかったとわかり、後日ユニットリーダーや副理事長を交えミーティングがありました。
そこで私は通所介護に異動させてほしい!と訴えたことで、通所介護に異動が決定。
その後、通所介護の管理者と気が合ったのもあって非常に楽しく仕事ができました。
そして、いつの間にかバーンアウトの症状も消えていました。
苦しい状態や体の不調は、きっと何かのサインだったのだと今なら思います。
自分の進んでいる道でちょっと立ち止まって、本当はどうすべきかを考える機会をくれたサイン。
お金や生活も大切ですが、本当に大事なのは体とこころの健康だと気づかれました。
そして今、娘と妻と3人家族で元気に暮らしています。
「バーンアウト」の対処法と予防法
バーンアウトの対処法と予防方法のおすすめを3つご紹介します。
休息をとる
体とこころの休息をとることで、枯渇してしまったエネルギーの回復を目指しましょう。
しかし職場の人員体制などにより、有給の申し立てをしにくい場面もあるかもしれません。
そのようなときは、有給申請する前に上司や気の置けない同僚にちょっと相談してみてはいかがでしょうか。
もしかすると相手もあなたのことが気になっていた、そんなことも少なくありません。
相談する前はこわくても、意外な展開があるかもしれません。
生活習慣を考える
「食べる」「寝る」「運動する」は体にもこころにも効果的です。
例えばジャンクフードばかり食べている方なら、それをちょっと減らし体によいものを取り入れてみてはいかがでしょうか。
体は何を食べるかで作られている言っても過言ではないので、ぜひ体によい食べ物も調べてみてください。
仕事以外に好きなことを探す
仕事をまじめに一生懸命にできる方は、それだけのエネルギーがある方といえると思います。
仕事に向けていたエネルギーを少し変えて、自分の好きな物探しに向けてみてはいかがでしょうか。
もしも仕事以外に好きなことが見つかれば、それが新たなやりがいに繋がるかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
バーンアウトの状態はつらいもの。
私もバーンアウトの状態が続いていたときは、不安や焦りで苦しくなっていました。
しかし今は、苦しかったあの時期があったから今の人生がよりよくなったと思っています。
体やこころの不調は、本当の自分からのサイン。
よりよく生きるためのヒント、なのかもしれません。
今回の記事が皆さまの幸せな人生作りの役に立てたら、本当に嬉しく思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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その後、素晴らしい仲間との出会いや仕事への気づきから、介護の仕事が楽しいと思える日々を送ることができました。
今では「バーンアウトを経験したから、今がある」と考えています。
13年間介護職として働いてきた経験を活かして、皆さまのお役に立つ記事を書いていきたいと思います。写真は私の似顔絵で、7歳の娘が描いてくれたものです。