看護師のクリニカルラダーとは?自分のレベルを確認しよう
更新日:2023/1/30
看護師として、どのくらいの技術が身に付いているか、経験年数に見合った技術があるのか気になっていませんか?
「他の看護師よりもレベルが低かったらどうしよう……」
そんな気持ちも感じているかもしれません。
でも、そんな時、役に立つのがクリニカルラダーです。
パトリシア・ベナー博士が提唱したクリニカルラダーは、看護師の技術や知識を客観的に評価するためのものです。
ですが、残念ながらすべての病院で活用されている訳ではありません。
導入されていない場合、クリニカルラダーの中身がどんなものなのか、どんなふうに活用したら良いのか、正直よく分かりませんよね。
この記事では、クリニカルラダーの中身や活用方法、自分のレベルを確かめるやり方について解説します。
記事を読めば、自分が今どのレベルにあって、どうしたらキャリアアップにつなげられるのかを知ることができます。
筆者も、クリニカルラダーを取り入れた病院で勤務していたので、そんな実体験も盛り込んでいます。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。
目次
クリニカルラダーの中身と活用方法を解説
クリニカルラダーという言葉だけ聞くと、なんだか難しいことのような気がしませんか?
でも、決してそんなことはありません。
では、クリニカルラダーの中身を、早速見ていきましょう。
クリニカルラダーには初心者、新人、一人前、中堅、達人のⅠ〜Ⅴまで、5つのレベルがあります。
レベルⅠ:初心者。基本的な手順に従って、必要な場合は助言をもらって看護を行う。
レベルⅡ:新人。標準的な看護計画を基に、自ら看護ができる。
レベルⅢ:一人前。患者さんの状況や状態に合わせて看護ができる。
レベルⅣ:中堅。視野を広く持ち、状況を予測しながら看護ができる。
レベルⅤ:達人。どのような状況でも患者さんに合った看護ができ、看護師のリーダー的な役割を果たすこともできる。
レベルごとの定義にあった看護を実践できていれば、そのレベルにあると判断できるように作られているのです。
細かい字がビッシリと書かれていますが、中身は具体的で分かりやすく工夫されています。
また、1つのレベルに対し4つの項目でそれぞれ目標と、具体的な行動目標が設定されています。
その目標を達成できているかどうかチェックして客観的に看護レベルを評価できる、という仕組みです。
一見すると面倒なものに思えますが、時間があるときにじっくり読んでみてくださいね。
意外と、「あ、これできてる」と思う項目がいくつも出てくることでしょう。
なぜクリニカルラダーが必要なの?
日本看護協会が2014年から推し進めるクリニカルラダーによる看護実践の評価ですが、なぜ必要なのでしょうか?
これを進めるのには、
・看護の質を高める
・自己研さんのため
という、2つの理由があります。
看護の質を高める
日本看護協会は、
「どこの、どんな環境の看護師でも同じような知識、スキルを身につけて質の高い看護を提供できるようにしよう!」
と考えています。
日本看護協会が示した3つの開発の目的から、その考えがよく分かります。
1.看護実践の場や看護師の背景に関わらず、全ての看護師に共通する看護実践能力の指標の開発と支援
2.看護実践能力の適切な評価による担保および保証
3.患者や利用者等への安全で安心な看護ケアの提供
(引用元:日本看護協会HP「看護師のクリニカルラダーの開発について」)
病院に限らず、施設勤務や地域医療の現場で働く看護師でも、同じようなレベルの看護を提供できるようになり、看護師全体の質の底上げにつなげたいという思いが見えますね。
患者さんや利用者さんにとっても、どこでも同じ質の看護を受けられるのは何より安心できます。
こっちの病院はいいけど、あっちはダメ……なんて事が起きないよう、看護の質を保つのは、医療を支える礎となります。
つまり、私たち看護師がレベルの高い看護実践ができるのは、患者さんや利用者さんにとっても大きなメリットになるのです。
自己研さんにも使える
そして、理由の二つ目は「自己研さん」です。
「質の高い看護を提供したいけど、どうやったら良いの?」
「どんな知識、スキルがあればいいのかな?」
こんな風に疑問に思う看護師も多いはず。
そんな不安や疑問を持つ看護師でも、ラダー表で自分の看護実践レベルが評価することで
・次に何を学べば良いのか
・どんな技術を習得すれば良いのか
が具体的に理解できるようになります。
次の目標が明確になり、実際の行動にうつしやすくなりますね。
そして、目標に向けた行動を重ねていくと、結果的に自分自身の看護の質が磨かれることに結びつくのです。
クリニカルラダーは経験年数が関係する?
「クリニカルラダーって、やっぱり経験年数が関係するの?」
という点が気になりますが、どれだけ看護実践能力を身につけられているかが判断のポイントです。
とはいえ、経験年数で蓄積されていく部分ももちろんあります。
たとえば、コミュニケーションスキルや、患者さんとの関わり方ですね。
新人の1年目看護師に比べれば、人生経験も豊富で、あらゆる患者さんと接してきた20年目のベテラン看護師の方が、
コミュニケーションも患者さんとの距離感もうまく図れるのは当然です。
だから、「経験年数と全く関係がないか?」というと、実はそうでもないことが分かります。
経験値として磨かれていく部分と、レベルの高い看護実践能力の2つが合わさってこそ、質の高い看護といえます。
技術を身につけたい、もっと知識が欲しいと思う、あなたの「意識の高さ」が、あなた自身をより高いレベルに押し上げてくれることでしょう。
自分のレベルを確かめる3つの方法とは?
次に、自分のレベルを確かめてみましょう。
自分のレベルを確かめる方法は3つあります。
それは
・自分で評価する方法
・上司に評価してもらう方法
・e-ラーニングで評価する
です。
自分で評価する
これは、ラダー表の項目に沿って自分で評価する方法です。
あなたが実践している実際の業務から「できている・できていない」を判断します。
ラダー表を見ながら、チェックを入れていくだけなので、手軽に評価ができます。
すぐに取り組めるので、自分のタイミングでできるのもポイントですね。
ここで気を付けなければならないのは「自分ではできている」と思うことでも、他者からは「できていない」と受け取られている場合があることです。
自分を客観的に見るように意識をしながら取り組みましょう。
上司に評価してもらう
とはいえ、自分での評価はどうしても主観的になってしまいがちですよね。
すると、自分ではなんとなくできているような気がするけど、ちょっぴり不安に感じる項目も出てきます。
こんな時は、職場の上司や指導者に協力を仰いでみましょう。
上司にラダー表に沿って評価してもらうメリットは
・自分では気づかないうちにできていたこと
・できていると思っていたのにそうではなかったこと
を、忖度なしに評価してもらえることです。
さらに、達成できなかった項目については、どんな行動、技術、知識が必要か、評価してくれた相手から具体的なアドバイスをもらってみてください。
すると、自分に足りないものが見えるだけでなく、どう行動したら良いかも分かるようになりますよ。
e-ラーニングで評価する
e-ラーニングで評価する方法もあります。
これは、パソコンやスマホで取り組め、テスト形式で知識や技術を確認することができるので、おすすめです。
私が勤めていた病院は、e-ラーニングで評価をする形式でした。
e-ラーニングは、業務の隙間でできる利点がありますが、私の勤め先では師長が進捗状況をチェックして、期日までにどこまでするかが決められていました。
だから、夜勤の仮眠時間を削って取り組んだり、夜勤明けや日勤の終わりに残って必死でやったりしたのを覚えています。
その時は
「正直、これなんの意味があるの?」
「役に立つの?」
と感じ、やらないと師長から注意されるからやっている程度の気持ちでした。
でも、グラフや点数として自分の看護レベルが可視化されるので「意外に私やれてるじゃん!」という前向きな気持ちも感じていました。
そんなe-ラーニングは、多少費用はかかりますが個人で申し込めるものもあります。
知識を深めるのにも役立ちますから、興味があればぜひ調べてみてくださいね。
質の高い看護を身につけてキャリアアップにつなげよう!
クリニカルラダーは、質の高い看護を実践できるようになるのに、とても役立ちます。
では、質の高い看護を実践できるようになると、どんな良い面があるでしょうか?
答えは、キャリアアップにつながる、という点です。
たとえば、主任、師長などの病棟での昇進や、専門看護師、認定看護師の資格を取るのにも役立ちます。
なぜかというと、自分の持っているレベルを確認するのは、自分が進むべき方向の再確認になるからです。
日々の業務に追われ、何が自分に求められているのか、自分がすべきことは何か見失ってしまいがちですよね。
そんな時、クリニカルラダーの評価を思い出せば、原点に返ることができます。
さらに、もう一つのメリットは、あなた自身が看護師として成長しているのを、目に見える形で確認できるようになる点です。
たとえば、以前は初心者レベルだったのに、今は一人前、中堅まで到達できているとしたらどうでしょうか?
自分が、少しずつではあるけれど着実に成長しているのがはっきりするのは、やっぱり嬉しいものですよね。
「やった!もっと頑張ろう!」
そんな気持ちにもしてくれます。
クリニカルラダーでの評価は、自分のレベルを確認してキャリアアップにつなげられるだけでなく、モチベーションのアップや維持にも最適なツールですね。
まとめ
いかがでしたか?
看護師のクリニカルラダーは、どの環境にあっても看護師としての実践レベルを確認し、より質の高い看護を目指すための指標であることが分かりました。
クリニカルラダーは、経験年数による経験値の蓄積だけを評価するものではありません。
何を経験し、活用できているかもレベル達成に影響します。
また、自分がどのレベルにあるかを評価し、目指すべき目標の設定に活用できます。
評価方法は
・自分で評価する
・上司に評価してもらう
・e-ラーニングで評価する
の3つの方法で評価できます。
すぐに取り組め、難しいことはありません。
自分の成長度合いを知るのにも最適で、何を学ぶべきか、どう行動すればいいかも明確にできるメリットがありますから、まずは、あなた自身の今のレベルを確認するところから始めましょう。
そして、あなたのキャリアアップやモチベーションアップにぜひ役立ててくださいね!
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社会人から回り道をして看護師資格を取得しました。
超急性期・慢性期の病棟勤務を経験し、訪問看護の道に入りました。訪問看護は5年目に。
2回の転職や、頑張りすぎて体調を崩した経験を教訓に、現場で頑張る看護師の皆さんに寄り添った情報をお伝えしたいと思っています。