もう悩まない!わかりやすいSOAPの書き方
更新日:2023/1/30
看護師として働いていると、逃れられない業務の一つに「記録」があります。
中でも「SOAP」については、書き方を指導されたり、どう書けばいいのか悩んでしまったりという経験がある方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、そんなSOAPの基本的な書き方から、効果的な記録になる方法についてお伝えしていきたいと思います。
患者像をしっかり捉えられ、伝わりやすい記録が書けるようになりたいですね。
目次
SOAPって何?
そもそも、SOAPとはどんな記録のことなのでしょうか。
SOAPとは経時的に起こったことを記録するものではなく
・患者の全体的な情報を収集
・統合して問題を抽出する
・または行った看護ケアについて評価する
記録になります。
情報は
「S(subjective):主観的情報」
「O(objective): 客観的情報」
に分けて収集し、
「A(assessment): 評価」で統合、
「P(plan): 計画(治療)」
で問題の抽出、または今後の方針を書くという4段構成になっています。
そしてこのSOAPを書く場面には3つのパターンがあると考えています。
1.新規入院患者の、初めての看護問題を立案する場合
2.既に立案されていた看護問題への介入を評価する場合
3.患者の疾患に合わせて、全身状態の評価をする場合
記録を書き始める前に、今回書くのはどの場面なのかを見極めることが大切です。
なぜなら、場面に合わせて収集するべき情報が変わるからです。
場面に合わせて、例文を提示しながらポイントを解説していきます。
新規入院患者の場合
どの病院でも、入院時にアナムネと呼ばれる情報収集用紙を記入してもらうと思います。
その情報をもとに、採用している看護理論、看護診断をもとに看護計画を立案していきます。
この場合のポイントは、主訴・現病歴を中心に、幅広い情報収集を行うということです。
その病院で採用されている看護理論(ヘンダーソンや、ゴードンなど)に当てはめて、項目ごとに該当する情報を集めていきます。
<例文> 70歳代 男性 自宅より救急搬送
主訴:呼吸苦、発熱、倦怠感
現病歴:肺炎の診断
S |
3日前から熱が出て、寝ていたんですけど治らなくて。苦しくなったのは、今日の朝からです。だるくて、動ける感じがしないですね。これからどうなるんですかね。妻が足が悪くて、家に一人でいるのも心配で。 |
O |
心拍数〇〇回/分、血圧△/△mmHg、呼吸回数〇回/分、酸素投与△L/分、SpO2:〇%、体温△℃。 |
A |
呼吸不全の状態であり、酸素投与で改善傾向。体動により増悪するため安静が保てるよう援助が必要。発熱による倦怠感もあり、解熱剤やクーリングなどを行い安楽に過ごせるようにする。 |
P |
#1呼吸不全 |
Sには本人の言葉をそのまま書きます。
たくさんお話してくれる患者さんの言葉をそのまま書くと長くなってしまいますので、収集したい情報に焦点を当てて、簡潔に書きましょう。
言葉数が少ない方、もしくは疼痛や呼吸苦の症状が強い場合には、ポイントを絞って質問しましょう。
Oには客観的事実を、主にバイタルサインや検査データなどの事実を書きます。
ポイントとしては、この欄に「苦しそう」などの主観的な様子や、「~の可能性あり」などの不確定要素は書かないことです。
AにはSとOで得られた情報を統合し、現状の評価や考えられる問題を記載していきます。
ここの書き方は、施設によって違いが大きい印象なのですが、ポイントは
・評価の「良い」か「悪い」をはっきりと書く
・問題は「〇〇のリスク」や「〇〇の可能性がある」といったわかりやすい書き方
をすることです。
Pには看護問題(看護診断)の名前を書くか、さらに具体的な行動を書くかになります。
施設によっては看護計画のケアプランに具体的な行動を書き、SOAPには記載しないということもありますが、いずれにしても他のスタッフが見て行動に移しやすい方法で記載することが大切です。
幅広い情報収集とは
・主訴・現病歴
・栄養状態や日常生活動作(ADL)などの情報
も収集することであり、「この方の問題になりそうなことは何か?」を考えるためのものです。
入院するからには何かの症状、そして原疾患があるわけですが、入院中に問題になることはそれだけではありません。
長期臥床による廃用症候群や、その方が過程で担っていた役割の損失なども、看護問題として挙げられ対策を立てるべきです。
この情報収集で問題が抽出されたら、それぞれの看護計画を立てて実行していきます。
次回は1週間、または規定された期間ごとに評価を行うわけですが、その際のポイントは2)になります。
既に立案されていた看護問題への介入を評価する場合
次に、既に入院している患者の定期評価の記録についてポイントを押さえていきます。
<例文>80歳代 女性 体重35kg BMI:16
ADL 要介護2 室内での転倒で大腿骨頚部骨折で入院。
#褥瘡発生リスクについて のSOAPの場合
S |
痛みはだいぶ良くなってきました。リハビリはやっているんですけどね、もう年ですし、あまり動けるようになりませんね。 |
O |
入院7日目。医師指示にて床上安静中。 |
A |
骨折による自力体位変換困難に加え、加齢による皮膚脆弱化や、おむつ内排泄による皮膚ストレス、るい痩による褥瘡好発部位にかかる体圧の増加もあり、褥瘡発生リスクは高い。 |
P |
プラン修正なく継続。 |
このタイプのSOAPのポイントは、
・「援助として具体的に何をやったのか」を書くこと
・「その援助は有効であったかどうか(根拠とともに)」を書くことです。
褥瘡リスクの例で言えば、
・どのくらい動けるのか(安静度、疼痛の程度)
・栄養が取れているのか(食事摂取量、点滴での補足量)
・体圧分散の方法(時間、頻度、用具の種類)
についての援助を書くことが重要ということになります。
また、これを考えるに当たっては、
・どんな状態が褥瘡のリスクになるのか
・何をしたら褥瘡を回避できるのか
についての知識が必要になります。
それを押さえることが、良い記録を書く第一歩となるでしょう。
上記の例では、A(アセスメント)の欄に「安静度、リハビリを拡大~」や「鎮痛剤の増量~」といった今後の見通しも書いてありますが、
これらの情報はP(計画)の欄に書くという施設もあります。
個人的には、「そういうことをしていったほうが良いと思うな~」という自分の考え(アセスメント)になるので、Aの欄に書かせていただきました。
患者の疾患に合わせて、全身状態の評価をする場合
筆者の所属する病院では、このタイプのSOAPを毎日書くことになっています。
領域別(呼吸、循環、神経、電解質…等)に情報を収集し、今この患者さんに行われている「治療」とその「経過」、そして先を見通して看護として介入できることは無いかを考えていきます。
<例文>70歳代 女性 虚血性心疾患により緊急入院。カテーテル治療後、1日目。
ADL自立、認知症なし、意識レベルクリア。
S |
今はもう痛くないですね。ちょっと重い感じはします。息苦しさはないです。 |
O |
急性冠症候群のため入院。PCI to #1-2。カテーテル治療後1日目。 |
A |
カテーテル治療後、胸痛なく、バイタル著変なし。経過良好。 |
P |
プラン継続。 |
治療後の患者さんということに焦点を当てて、全身的な情報収集をしていきます。
この事例で言えば、虚血性心疾患では心電図の変化や胸部症状の出現がないかどうかは必ず書くべきですし、また労作時の症状の変化も見過ごせません。
また、ADL自立であり、退院先としては自宅が第一選択になります。
自宅に帰れるように、現在可能な範囲でリハビリや教育が行えているのかという情報も書いていく必要があります。
筆者はICU所属のため、「こういう症状がでる」「こういう経過をたどっていく」という知識が必要不可欠と教育を受けました。
しかし一般病棟だとしても、この考え方は大切なのではないかなと感じています。
医療スタッフとして、その方の最終ゴールを見据え、時にはご本人やご家族と相談しながら、
入院中の一日を有意義なものにしていくというのが、一番身近にいる看護師ならではの役割だと考えます。
その思いが一番現れるのが、このタイプのSOAPになります。ぜひ、患者さんのゴールを見据えたその日の記録というものを考えていただければと思います。
気を付けたいNGポイント
書き方については上記で説明してきた通りですが、さらに気を付けたいNGポイントについてご紹介していきます。
い抜き言葉、ら抜き言葉
「やってません」「食べれてます」などの、い抜き・ら抜き言葉はNGです。
「やっていません」「食べられています」など、正しい言葉遣いを心掛けましょう。
勝手な略語
医療の世界では、特に医師がアルファベットを使った略語でカルテを書くことがしばしばあります。
しかし、看護記録にそれはNG。
施設ごとに記載基準があると思うので、それに則って記録を書くようにしましょう。
抽象的な表現
「観察していく」「工夫する必要がある」「適宜」など、他のスタッフが見て具体的な行動が起こせないような記録はNGです。
「〇〇がないか確認していく」であれば、他スタッフはそれがあるかないかを見ていけばよいという具体的な行動がわかります。
その他の表現でも「水分にはとろみをつける(できれば何㎖の水に対しとろみ剤はどのくらいかも記載)」や「2時間に1回」などの具体的な表現に変えましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。SOAPって一見難しそうですが、ポイントを押さえればすぐに上達するものです。
普段から、
「この患者さんに必要なことはなんだろう?」
という意識で患者さんを見ていれば、自然と身についていくと思います。
必要なことが見つからない場合や、経過が予測できない場合には、自分の知識が不足している可能性があるので、
その疾患や病態についての知識をさらに深めるチャンスとなります。
本やインターネットで調べたり、医師やその他コメディカルスタッフと情報共有したりすることも一つの方法です。
また、他の人の記録を読むことで勉強になることも多いので、自分より前の受け持ちさんの記録を読んでみましょう。
いい表現や着眼点があったらぜひ取り入れてほしいですし、疑問があったらその人に質問してみると良いでしょう。
それがきっかけで良いカンファレンスになるかもしれませんね。
部署内のスタッフで記録も精度を上げていけると、いい看護につながりますね。
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